アルメニアアゼルバイジャン戦争 - ちゅうにちの記事から

軍衝突、死者68人に - アルメニアアゼルバイジャン

中日新聞 - 2020年9月29日05時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん、カイロ=蜘手美鶴さん)

旧ソ連アルメニアアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフ自治州で2020年9月27日、両国軍が衝突し、双方合わせ少なくとも68人が死亡した。アゼルバイジャンは係争地の一部の村を奪還したと宣言。両国ともに戒厳令を発動し、交戦が続いとるとみられる。

アルメニアとアゼルバイジャンの地図(ちゅうにち) 635-488

ロシアメディアがまとめた両国当局の発表によると、死者はアルメニア側が民間人2人と軍人59人、アゼルバイジャン側は民間人7人。両国とも相手が先に戦闘を仕掛けたと非難しとる。

アルメニア国防省報道官は「アゼルバイジャンの兵士およそ200人を殺害した」と述べ、戦車30台と軍用ヘリ、ドローンを破壊したと発表。アゼルバイジャン国防省アルメニアのミサイル防空システムと戦車22台を破壊したなどとコメントしたが真偽は不明。

両国に影響力を持つロシアの外務省は双方に即時停戦を求めた。プーチン大統領アルメニアパシニャン総理大臣との電話協議で武力衝突に懸念を表明。アルメニア旧ソ連6カ国の集団安全保障条約に加盟しており、交戦が拡大した場合、ロシアは軍事介入するかの判断を迫られる可能性もある。

アゼルバイジャンとつながりの深いトルコのエルドアン大統領は2020年9月27日、アゼルバイジャンアリエフ大統領と電話協議し、全面支援を表明。ツイッター上で「アルメニアは地域にとっての最大の脅威だ。今回の侵略に対し、世界にアゼルバイジャン側に立つよう呼び掛ける」と非難した。シリア人権監視団(ロンドン)によると、トルコはシリア国内のトルコ雇い兵およそ300人をすでにアゼルバイジャン側に派遣したという。

アゼルバイジャン西部のナゴルノカラバフ自治の帰属を巡る紛争はおよそ30年にわたって続いとる。アルメニア人勢力が1991年に「ナゴルノカラバフ共和国」と称して統治し、これを許さないアゼルバイジャンとの間で戦闘になっとる。アルメニアは親ロ国で、主にキリスト教が信仰されとる一方、アゼルバイジャンイスラム教徒が多い。今年2020年7月にも北部の国境で死者を出す軍事衝突が起きとった。

アゼルバイジャンアルメニア東部にも攻撃か - 死者100人超

中日新聞 - 2020年2020年9月30日05時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

アルメニアアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフ自治州周辺で起きた両軍の衝突は2020年9月29日も続き、死者は民間人を含めて106人に達した。アゼルバイジャンはナゴルノカラバフ自治州の中心都市やアルメニア東部にも攻撃を行っているもようで、1994年の停戦以来、最悪の被害になる恐れがある。

タス通信などによると、犠牲者はナゴルノカラバフで兵士84人と民間人10人、アゼルバイジャン側はナゴルノカラバフ周辺に住む民間人11人。アルメニア側は「アゼルバイジャン兵を200人殺害した」と主張しており、2016年の軍事衝突の犠牲者およそ110人を上回る可能性がある。

国連のグテレス事務総長や両国に影響力を持つロシアのプーチン大統領らが即時停戦を要請しとる。

アルメニア国防省は2020年9月29日、アルメニア東部・バルデニスがアゼルバイジャン無人機から攻撃を受け、民間人1人が死んだと主張。アルメニアはロシア主導の旧ソ連6カ国軍事同盟「集団安全保障条約」に加盟しており、アルメニア本土への攻撃が事実であれば、ロシアは対応を迫られそうだ。

アルメニアの実効支配地域(ちゅうにち) 618-474

アルメニアアゼルバイジャン黒海カスピ海に挟まれたカフカス地方にあり、ともに旧ソ連の構成国。1988年、アルメニア系住民が多数を占めるナゴルノカラバフ自治州で分離独立運動が起き、1991年のソ連崩壊前后からアゼルバイジャンと戦闘を繰り広げてきた。独立宣言した自治州とアルメニアに隣接した周辺領域はアルメニア系住民が統治。犠牲者はこれまで3万人に上るとされる。

ロシアはアルメニアアゼルバイジャン双方と友好関係を維持するが、ナゴルノカラバフ自治州の帰属問題では事実上アルメニアを支援してきた。アゼルバイジャン国民の間では反ロ感情もくすぶる。これに対してアゼルバイジャンを強力に支援するのが民族的に近く、イスラム教信者の多いトルコだ。アルメニアは第1次大戦で、トルコの前身、オスマン帝国から虐殺を含め激しい迫害を受けたとして当時の責任を追及する活動を国際的に展開。トルコは猛反発し、「アルメニア憎し」でアゼルバイジャンと結束しとる。

軍事衝突をめぐる関係国の相関図(ちゅうにち) 483-635

国連安全保障理事会は2020年9月29日、事態悪化を防ぐため緊急会合を開く。アメリカは、政界ではアルメニア系住民が影響力がある一方、アメリカ有力エネルギー企業がアゼルバイジャンに石油利権を有しとることから、仲介に動くのは難しいとの見方がある。

〔ナゴルノカラバフ紛争〕
ソ連末期、アゼルバイジャン西部のナゴルノカラバフ自治州で多数派を占めるアルメニア系住民がアルメニアへの編入を要求し、1991年からアゼルバイジャンと本格的な戦闘に突入し、1994年にロシアなどの仲介で停戦合意。その后も軍事衝突が頻発しとる。アルメニアは分離独立派を全面支援し、自治州だけでなく周辺も含め「ナゴルノカラバフ(アルツァフ)共和国」の名称で事実上、実効支配しとる。

うわっ!戦争だ! - アルメニアとアゼルバイジャン - あきひこのいいたいほうだい|2020/09/30

にしアジアの北部にとなりあわせにある、アルメニアアゼルバイジャンが軍事衝突した。アゼルバイジャンのなかにあるナゴルノカラバフ自治州の帰属をめぐってのあらそいだ。まあはい30年もつづいとるあらそいで、ほれがこんかい再燃したってわけだ。キリスト教の一派を信奉するアルメニアと、イスラム教を信奉するアゼルバイジャン。うしろにあるロシアやトルコっていう大国の動向もからんでくる。

トルコ、シリア戦闘員投入か - アルメニアアゼルバイジャン衝突1週間

中日新聞 - 2020年10月7日05時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

アルメニアアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフで1994年の停戦以降、最大規模となる武力衝突が始まって1週間余が経過した。アゼルバイジャンと同盟関係にあるトルコが、激しい内戦の続くシリアから戦闘員を1,000人規模で雇い兵として戦闘地域などに投入しとるとみられ、アルメニアのほかロシアやフランスなどが懸念を強めとる。

2020.10.4 ナゴルノカラバフのステパナケルト(ちゅうにち) 640-426
△ 2020年10月4日、アルメニアとアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフのステパナケルトで、砲撃をうけたとおりをあるくひとびと=タス・共同

フランス大統領府は2020年10月1日、「トルコがシリアから戦闘員をカラバフに移送しとる」として、マクロン大統領とロシアのプーチン大統領が電話協議で懸念を共有したと発表。ロシア外務省もシリアの武装勢力が、カラバフ地域を含めたカフカス地方全体の長期的な脅威になると指摘した。

2020年10月5日付のロシア独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」によると、シリア西北部イドリブ県から既に700~1,000人が月給1,800百ドル(およそ19万円)で、カラバフ周辺で戦闘地域やガス・石油パイプラインの警護のため送り込まれた。死亡時は家族に3万ドルの弔慰金が支給される契約という。

ロシア通信は2020年10月5日、シリアからの雇い兵がカラバフ周辺の戦闘で既に90人余り死亡したと報道。イギリスBBC放送(ロシア語電子版)などは現地での活動実態を詳しく伝えとる。

プーチン政権はアサド政権の要請で2015年9月末からシリア内戦に軍事介入しており、トルコが支援するシリアの反政権派を「テロリスト」と呼んで拠点に激しい空爆を行ってきた。このためロシアに対し恨みを持つ反政権派の残党による将来のテロの火種になる可能性を懸念しとるもようだ。

ロシアの軍事専門家アレクサンドル・ゴリツ氏は「カラバフに入った雇い兵をトルコが停戦后に制御できるか分からん。イスラム過激派が含まれとる恐れもある」と懸念を示した。

今回のカラバフ周辺の衝突では双方の死者が、シリア戦闘員を除いても民間人を含めて300人近くに達しとるもよう。

アゼルバイジャン軍はカラバフ東部の一部を支配下に置いたとの情報もあり攻勢を強めとる。インタファクス通信によるとカラバフを実効支配するアルメニア側は2020年10月5日、「戦略的に一時的撤退」を始めたと発表したが、詳細は明らかになっとらん。

カラバフ問題を担当するヨーロッパ安全保障協力機構(OSCE)ミンスクグループ(共同議長国、アメリカ、ロシア、フランス)の外務大臣は2020年10月5日、即時の停戦を要請した。トルコとアゼルバイジャンは2020年10月6日、外務大臣会談を行った。

アルメニアアゼルバイジャン衝突 - イラン、包囲網を警戒

中日新聞 - 2020年10月9日05時00分)
(カイロ=蜘手美鶴さん)

アルメニアアゼルバイジャン間で続く武力衝突を巡り、イランが周辺国の対イラン包囲網に危機感を強めとる。ロウハニ大統領は「国境にテロリストを送ることは許容できん」と述べ、隣国アゼルバイジャンにシリアからイスラムスンニ派の雇い兵を送るトルコをけん制。アゼルバイジャンは武器輸入を通じてイスラエルと関係が深く、今回の武力衝突を通じてさらに接近する恐れもある。AFP通信などが伝えた。

国営放送によると、ロウハニ大統領は2020年10月7日、「(両国の争いが)地域戦争に拡大せんよう注意せにゃいかん」とも主張。これまで中立の立場だったが、シリア内戦で敵対するスンニ派の雇い兵が隣国入りし、シーア派大国のイランが警戒したとみられる。

イランが警戒を強める背景には、2020年8月以降進むイスラエルアラブ諸国の国交正常化がある。イスラエルの対イラン包囲網は国交を結んだペルシャ湾対岸のアラブ首長国連邦UAE)とバーレーンまで迫り、イラン周辺を「敵国」が取り囲む状況が進みつつある。

また、アゼルバイジャンイスラエルから多くの武器を購入しており、軍事的つながりが強い。今回の武力衝突を機にイスラエルアゼルバイジャンとの関係を深め、さらに包囲網の強化を図る可能性もある。

一方、シリア人権監視団(ロンドン)によると、20万人超のアルメニア人が住むレバノンからは、義勇兵数百人がアルメニア入りしたという。義勇兵アルメニア人とされるが実態は不明。レバノンではイラン支援のシーア派組織ヒズボラの影響力が強く、一部ではシーア派アルメニアに入ったと疑う声もある。

イランはアルメニアと経済的つながりが深いが、国内に1割超おるアゼルバイジャン系住民の反発を避けるため、表立った支援はできん。カイロ・アメリカン大のサイド・サデク教授(政治学)は「アルメニア支援に別部隊(ヒズボラ)を使う可能性はある。シリアからスンニ派の雇い兵が送られたことでイランには介入の口実ができた」と指摘する。

死者400人に - 戦闘拡大(モスクワ=小柳悠志さん)
アルメニアアゼルバイジャンが領有を争うナゴルノカラバフ地域での両軍の衝突は2020年10月7日、死者が民間人を含めて400人に達した。同地域に隣接するアルメニアアゼルバイジャンの街も戦火に巻き込まれたもようだ。

2020.10.7 砲撃をうけるナゴルノカラバフ地域(AP) 640-466
△ 2020年10月7日、ナゴルノカラバフ地域で、アゼルバイジャンがわからの砲撃によりけむりがあがるまちなみ=AP

「共和国」を自称するナゴルノカラバフのアルメニア人勢力によると、2020年10月7日に死亡が確認された兵士は30人で、戦闘が開始してから計350人になった。民間人は20人。一方のアゼルバイジャンは民間人30人が死んだとしとる。

アルメニアはナゴルノカラバフ地域近くの都市バルデニスが攻撃を受けたとし、アゼルバイジャンも同地域以外の自国領で戦闘被害を受けたと主張しとる。アルメニアと軍事同盟を結んどるロシアのペスコフ大統領報道官は2020年10月7日、「ナゴルノカラバフ地域はアルメニアではない」として、現段階で軍事介入はしないと説明した。

停戦合意后も攻撃つづく - アゼルバイジャンアルメニア衝突

中日新聞 - 2020年10月12日16時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

アゼルバイジャン政府は2020年10月11日、西部の中心都市ギャンジャの住宅がアルメニア軍の攻撃を受け、民間人9人が死亡したと発表した。両国の係争地ナゴルノカラバフを巡る武力衝突はロシアの仲介で2020年10月10日に停戦が発効したが、両国は、直后から互いに相手側が停戦合意に違反したと主張、早くも維持が難しくなっとる。

2020.10.11 アゼルバイジャン西部のギャンジャ(ちゅうにち) 640-426
△ 2020年10月11日、アゼルバイジャン西部のギャンジャで、攻撃をうけたばしょを捜索する救援隊員ら=AP

アゼルバイジャン国防省アルメニアの地上部隊を攻撃する様子の映像を公開。ロシアメディアはナゴルノカラバフの一部で戦闘が続いとると報じとる。

アルメニアアゼルバイジャンの両外務大臣は2020年10月9日〜10日未明、ロシアの仲介でモスクワで会談。2020年10月10日正午からの停戦で合意したが、停戦の具体的な内容は追って協議するとしとった。

ロシアのプーチン大統領は2020年10月10日、ナゴルノカラバフ情勢を巡り、アルメニアと関係が深いイランのロウハニ大統領と電話協議した。

ナゴルノ紛争 - 「宗教対立」とあおるな

中日新聞 - 2020年10月14日05時00分)

旧ソ連アゼルバイジャンアルメニアが再び戦火を交えた。合意した停戦は風前のともしびだ。ヨーロッパアメリカではこの紛争を宗教的対立に単純化する傾向もあるが、一面的な見方は調停を妨げかねん。

戦火が上がったアゼルバイジャンのナゴルノカラバフ地区はアルメニア系住民が多数で、アルメニアへの編入を訴えている。民族対立から両国が武力衝突した1990年代には、およそ3万人が犠牲になった。紛争は未解決で、現在はアルメニアが実効支配している。

今回の戦闘は先月2020年9月27日に始まり、400人以上が死亡。ロシアの仲介で2020年10月10日、停戦合意したが、現在も戦闘が伝えられとる。

注目されるのはトルコだ。同じイスラム圏で言語的にも近いアゼルバイジャンを支持する。キリスト教圏のアルメニアはトルコが軍事介入しとると非難し、ヨーロッパアメリカでも宗教を背景にしたトルコの覇権主義に懸念が広まっとる。

トルコは軍事介入を否定しとるが、懸念を呼ぶ背景はある。トルコのエルドアン政権はイスラム化政策を重視。盟友のイスラムスンニ派組織「ムスリム同胞団」がかかわるシリアリビアの内戦に軍事介入してきた。ギリシャなどと権益を争う東地中海にも資源探査船を軍艦の護衛付きで送り、ヨーロッパ諸国の反発を招いた。

だが、この紛争を宗教対立と決めつけ、トルコが軍事介入しとると断じるのは早計だろう。トルコは支持するアゼルバイジャンに軍需品を売却しとるが、同国のアリエフ政権は世俗主義だ。さらに国民の多くはイスラムシーア派の信徒で、スンニ派のトルコとは異なる。

なによりトルコはロシアとの関係を優先しとる。ロシアはアルメニアと集団安全保障条約を結び、アゼルバイジャンとも関係は良好で仲介に努めとる。トルコはロシアから地対空ミサイルシステムS400を導入しとる最中で、両国が介入するリビアとシリアの内戦でも協調を探っとる。軍事介入はそうしたロシアとの関係構築を損ないかねん。

2003年のイラク戦争では、アメリカイギリスがイラク大量破壊兵器保有を開戦理由にしたが、后にデマと分かった。紛争原因を宗教対立とみると分かりやすいが、敵対感情に油を注ぎ、こじらせかねん。

戦争に宣伝戦はつきものだ。だからこそ多面的な情勢分析が不可欠だ。平和的解決に向け、日本政府も仲介支援に尽力してほしい。

ナゴルノカラバフめぐる死者「5,000人ちかい」 - ロシア情報、犠牲者急増

中日新聞 - 2020年10月24日05時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

係争地ナゴルノカラバフを巡り、ロシアのプーチン大統領は2020年10月22日、アルメニアアゼルバイジャンの戦闘で死者が「両国合わせて5,000人に近づいとる」との独自情報を明らかにした。アゼルバイジャンが最新兵器を投入するなどして、戦闘が拡大しており、犠牲者が急速に増えとる可能性がある。

2020.10.20 アゼルバイジャン西部のギャンジャ(ちゅうにち) 640-428
△ 2020年10月20日、アゼルバイジャン・ギャンジャで、爆撃で破壊され廃虚となった住宅地をあるく少年=タス・共同

アゼルバイジャンは軍事衝突が勃発した2020年9月下旬から無人攻撃機を投入し、ナゴルノカラバフ南部を奪還。アルメニアが配備したロシア製の地対空ミサイル「S300」や戦車を見つけだし、レーダー誘導弾で破壊しとる。

無人攻撃機TB2(ちゅうにち) 640-423
△ アゼルバイジャン軍が使用しとる無人攻撃機「TB2」=トルコ防衛産業局公式サイトから

ロシアの軍事評論家パーベル・フェルゲンガウエル氏は「ドローン戦争の時代が到来した」と話し、現地が最新兵器の実験場となっていると憂う。

アゼルバイジャン軍の無人攻撃機の主軸はトルコ製の「TB2」。内戦が続くシリアやリビアでも投入され、その性能の高さから「軍事ドローン界のスター」(イギリスBBC放送)と称される。イスラエル無人機も投入している。

アゼルバイジャンは石油と天然ガスの産出国。2000年代以降、原油輸出で得た資金で軍備拡張を急いだ。人口およそ1,000万の国にもかかわらず、ストックホルム国際平和研究所によると、2014〜2018年の武器輸入で世界23位に付ける。武器の主な調達先はロシアイスラエルトルコだ。

一方、アルメニアの武器調達は軍事同盟国のロシア頼み。1990年代初頭のナゴルノカラバフ紛争では事実上の勝利を収めたが、今回は守勢に回っとる。2020年10月22日現在、兵士だけで900人余が死亡した。

アルメニアパシニャン総理大臣は「ナゴルノカラバフは数千年前からアルメニア人が居住する」と主張。「外交的な解決はない。国民は祖国防衛のために武器を取れ」と鼓舞しとる。

アゼルバイジャン奪還地域(ちゅうにち) 418-640

アゼルバイジャンは民間人60人余が犠牲になったと発表しとるが、兵士の死者数は公表しとらん。

2020年10月23日にはアルメニアアゼルバイジャンの両外務大臣アメリカでポンペオアメリ国務長官と会談する予定。アメリカ大統領選を前に、外交成果を得たいトランプ政権が停戦を仲介するとみられる。

ナゴルノ紛争、アルメニア総理大臣夫人が戦場へ

中日新聞 - 2020年10月28日16時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

アルメニアパシニャン総理大臣の妻アンナ氏(42)は2020年10月26日、アゼルバイジャンとの間で戦闘が続くナゴルノカラバフ地域に数日内に入り、軍務に就くとフェースブックで表明した。政権の求心力維持と前線の士気向上を図る狙いとみられる。

新聞記者のアンナ氏は、女性部隊の一員として戦闘訓練を受けとる。アゼルバイジャンとの軍事衝突が勃発した2020年9月末には、前線への出征が予定されとる志願兵の息子に「祖国のために死んでくれることが一番いい」と言って送り出すなど、愛国的な言動で知られる。

アンナ・ハコビアンさん(ちゅうにち) 600-536
△ 戦闘訓練をうけるパシニャン総理大臣のつまアンナ氏

ナゴルノカラバフ地域を巡る紛争では、アルメニア系住民が「ナゴルノカラバフ(アルツァフ)共和国」と称して実効支配する同地域の奪還を目指し、アゼルバイジャンが2020年10月27日にナゴルノカラバフ共和国の国防大臣を無人攻撃機で殺害したと発表。アルメニア側は負傷だとして死亡情報を否定しているが、アルメニアの形勢不利が伝わっている。

アルメニア総理大臣夫人、軍服すがた公開 - ナゴルノカラバフ、戦意高揚ねらう?

中日新聞 - 2020年10月29日05時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

写真=戦地へ赴くと表明したパシニャン首相の妻アンナさん=公式ホームページから

旧ソ連カフカス地方の係争地ナゴルノカラバフを巡るアゼルバイジャンとの戦闘でアルメニアのパシニャン総理大臣夫人のアンナさん(42)は2020年10月26日、近日中にナゴルノカラバフに入り、軍務に就くと表明した。戦況はアルメニアの劣勢が伝えられ、ファーストレディーとして、国民の士気を鼓舞する狙いとみられる。

軍服すがたのアンナ・ハコビアンさん(ちゅうにち) 640-594
△ 軍服すがたのアンナ・ハコビアンさん

女性部隊の一員として武器も扱い、「祖国と(民族の)尊厳を敵に渡してはならん」とフェースブックで主張。国民にげきを飛ばした。2020年9月末、前線に赴く息子(20)に「お国のために死ぬのが最高の誉れ」と言い渡すなど、愛国的な言動で知られる。

アルメニア系住民が「ナゴルノカラバフ(アルツァフ)共和国」と称して実効支配する領域は、2020年9月27日からの軍事衝突以来、アゼルバイジャンの攻撃にさらされ、アルメニア側は公式発表だけで1,040人余が犠牲になった。18〜55才の男性は志願兵となることが推奨され、パシニャン氏は「最后まで戦う」と主張しとる。

美人兵士|いわせあきひこ|フェースブック|2020年11月16日12:35

美人兵士。いやー、こんな美人と白兵戦とかぜったいやりたくないよなー。で、このひと、じつはアルメニアの総理大臣のおくさんだってことにもおどろく。ただ、奮戦むなしくアゼルバイジャンに敗戦。 #アルメニア

ロシア軍が駐留開始 - ナゴルノカラバフ停戦、アルメニア市民暴徒化

中日新聞 - 2020年11月12日05時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

ロシア政府は2020年11月10日アルメニアアゼルバイジャンの係争地、ナゴルノカラバフでの両国の停戦を受け、係争地への平和維持部隊の派遣を始めた。事実上、敗北したアルメニアでは反政府運動も起きており、一部の実効支配地域をアゼルバイジャンに返還するとした停戦合意が履行されるか不透明な面もある。

ロシア平和維持部隊の軍用車両(AP/ちゅうにち) 640-355
△ 2020年11月11日、アルメニアの首都エレバン郊外の空港から移動するロシア平和維持部隊の軍用車両

アルメニア系住民が統治してきたナゴルノカラバフのうち、南部は既にアゼルバイジャンが奪還。西部なども近くアゼルバイジャンに返還される取り決めだ。2020年9月に軍事衝突が勃発する前と比べ、アルメニア系住民が統治する範囲は3分の1以下に狭まりそうだ。

ナゴルノカラバフには15万人ほどが居住していたが、軍事衝突后は中核都市ステパナケルトからアルメニア本国に避難する人が続出し、統治が難しくなっとる。ロシア軍は現地に2,000人弱を駐留させ、治安維持にあたる。

アルメニアでは敗北を受け入れれん市民が暴徒化。2020年11月10日にはミルゾヤン議長が市街で殴打され、議場も占拠された。パシニャン総理大臣はフェースブックに「戦闘が続けばステパナケルトも陥落する恐れがあった」と書き込み、苦肉の措置だったことを強調した。

ナゴルノカラバフ紛争は旧ソ連時代の1988年、当時のナゴルノカラバフ自治州で多数派のアルメニア系住民が独立やアルメニアへの帰属変更を求めたことが始まり。停戦を受け、アゼルバイジャンは紛争で故郷を追われた国内避難民の帰還を促す。

アルメニア支配地域返還 - ナゴルノカラバフ停戦、1994年以来の勢力図変更

中日新聞 - 2020年12月2日05時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

アゼルバイジャン西部ナゴルノカラバフ地域を25年以上にわたり実効支配してきたアルメニア2020年11月30日、両国の停戦合意に基づく返還対象地域を明け渡した。これを受けて2020年12月1日、アゼルバイジャン政府は対象地域が統治下に戻ったと発表したが、アルメニアでは停戦合意に反発する声も根強い。

アルメニアが返還する実効支配地域(ちゅうにち) 640-425
△ アルメニアが返還する実効支配地域

停戦は6週間にわたる軍事衝突の后、ロシアのプーチン大統領の仲介で2020年11月10日に発効。事実上敗北したアルメニアは2020年11月末までにナゴルノカラバフ地域の3地区を順次、返還することが決まっとった。

現地報道によると返還される地区ではアルメニア系住民が、自宅に放火してから去る例が后を絶たん。西部ラチン地区から退去する住民はロシア紙の取材に「この家に23年住んできた。(后から来る)アゼルバイジャン人のために残すつもりはない」と語った。

アルメニアはナゴルノカラバフ旧自治州だった地域の一部も失う。旧自治州とアルメニア本国を結ぶ幹線「ラチン回廊」は通行の安全が保障される条件だが、15万人とされるナゴルノカラバフの人口が急減するのは必至とみられる。

アルメニアの首都エレバンの作家エレナ・アスラニャンさん(59)は本紙に会員制交流サイト(SNS)を通じ「アルメニアにとって最も不利な条件の停戦合意になった責任は、ひとえに政権にある」と語った。アルメニアパシニャン総理大臣はこれまで「実効支配地域を残すためには停戦はやむを得んかった」としとるが、野党支持者ら多くの市民が政府を非難し退陣を要求しとる

ナゴルノカラバフ一帯ではロシア軍が2,000人弱の平和維持部隊を展開しており、地雷の撤去やインフラ整備を支援する。調停者として駐留することで、周辺地域への影響力を強める狙いとみられる。

ナゴルノカラバフ旧自治州ではソ連末期、アルメニア系住民がアゼルバイジャンからの分離独立を目指して紛争に。1994年にロシアなどの仲介で停戦合意したが、アルメニア側が旧自治州と周辺を実効支配することを認める内容だったため、アゼルバイジャンは不満を募らせとった。

アゼルバイジャンへの領土移管完了 - ナゴルノカラバフ停戦合意が完全履行

中日新聞 - 2020年12月2日09時45分)
(モスクワ共同)

アゼルバイジャンアルメニアによる係争地ナゴルノカラバフを巡る紛争は2020年12月1日アルメニアが占拠しとった領土のアゼルバイジャンへの引き渡しが完了し、ロシアの仲介で結ばれた2020年11月9日停戦合意は完全履行された。現地に展開しているロシア軍の平和維持部隊が発表した。

ラチン回廊を警備するロシア軍の平和維持部隊(ちゅうにち) 450-298
△ 2020年12月1日、ラチン回廊を警備するロシア軍の平和維持部隊(ロシア国防省提供・共同)

アゼルバイジャン領内にありながら、アルメニア人が多数を占めるナゴルノカラバフを巡り2020年9月末に始まった武力衝突は、2020年11月9日の停戦合意に基づき現地入りしたロシア部隊の監視下で戦闘が完全停止。アルメニアが占拠しとった周辺地域をアゼルバイジャンに引き渡すことで終結した。

アゼルバイジャンが戦勝パレード - ナゴルノカラバフ紛争、トルコ大統領も出席

中日新聞 - 2020年12月11日05時00分)
(モスクワ=小柳悠志さん)

アゼルバイジャン2020年12月10日、係争地ナゴルノカラバフを巡る戦闘でアルメニアに勝利したことを記念する軍事パレードを、首都バクーで開いた。アゼルバイジャンを支援したトルコのエルドアン大統領も出席、「アルメニアは今回の結果から(国のあり方を)学んでほしい」と述べ、影響力を誇示した。

トルコエルドアン大統領とアゼルバイジャンアリエフ大統領(ちゅうにち)
△ ひだり=トルコエルドアン大統領/みぎ=アゼルバイジャンアリエフ大統領

パレードには3,000人超の兵士が参加し、ミサイルや軍用車が披露された。アゼルバイジャンのアリエフ大統領は「アルメニアが外交的解決に応じず、やむをえず軍事的手段に訴えた」と軍事行動の正当性をあらためて主張した。

2020年9月末から6週間続いた今回の戦闘では、アゼルバイジャンと民族的に近く「兄弟国」を任じるトルコアゼルバイジャン無人攻撃機を供給、ロシア製の武器を使うアルメニア軍を圧倒した。ロシアのプーチン大統領の仲介で2020年11月10日に停戦が実現したが、旧ソ連圏におけるロシアの威信低下を指摘する声もある。

ナゴルノカラバフで交戦、停戦后はつ - ロシア部隊仲介で協議

中日新聞 - 2020年12月13日21時40分)
(モスクワ共同)

ロシア国防省によると、アルメニアアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフの南部で2020年12月12日、両国の軍部隊が交戦した。2020年11月10日に停戦が実現して以降初の双方の衝突、停戦合意違反となった。両国国防省はそれぞれ声明を出し、相手側による停戦違反を非難。少なくともアゼルバイジャン軍4人が死亡、アルメニア軍6人が負傷したもよう。  

現地に展開するロシア軍の平和維持部隊が間に入り、アルメニアアゼルバイジャン両国軍の代表と、攻撃の停止や、双方部隊が停戦合意で定められた位置まで戻るよう協議している。

2020.12.31 アルメニアとアゼルバイジャンの地図(あきひこ) 1180-768